スポットワークの労務管理、ここが肝心!

人事担当者の皆さま、近年、急な人手不足を補う手段として「スポットワーク」の活用が急速に広がっていますね。
しかし、その手軽さの裏には、事業主として「知らない」では済まされない重要な労務管理上の義務が潜んでいます。厚生労働省のリーフレットを基に、スポットワークを適切に運用するためのポイントを確認していきましょう。

1.労働契約の明確化と条件明示は必須

スポットワークは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結する形態です。重要なのは、「誰と誰が契約を結ぶのか」、そして「いつ労働契約が成立したのか」を明確に把握すること。
アプリを通じたマッチングでは、求人応募時点で契約が成立すると見なされるケースが多いことを理解しておきましょう。
さらに、労働条件の明示は事業主の義務です。書面交付などの方法で、賃金や労働時間などを具体的に示さなければ、労働基準法違反となります。仲介事業者が代行する場合でも、その内容が適切か、事業主として最終確認を怠らないでください。

2.労働時間と賃金の適正な管理

「労働時間」の捉え方には特に注意が必要です。
指定された制服への着替え、業務終了後の清掃、事業主の指示による待機時間なども、労働時間として賃金支払いの対象となります。これらの時間を含めて始業・終業時刻を設定し、実際の労働時間に基づいた賃金を遅滞なく支払う義務があります。
また、事業主都合でスポットワーカーを丸一日休業させたり、予定より早く仕事を切り上げさせたりした場合は、労働基準法第26条に基づき「休業手当」の支払いが必要です。
一方的な賃金の減額は労働基準法違反となりますので、絶対に行わないでください。

3.労働災害防止とハラスメント対策

スポットワーカーも、労災保険給付の対象です。
通勤中や業務中の怪我に対しては、就労先の事業について成立する保険関係に基づき労災保険給付を受けることができます。したがって、事業主には機械の危険性や安全装置の取り扱い方法に関する教育など、労働安全衛生法に基づく労働災害防止対策を講じる義務があります。
さらに、パワハラやセクハラなどのハラスメント対策も不可欠です。相談窓口の設置や行為者への措置内容の周知など、労働施策総合推進法に基づく各種措置を講じ、スポットワーカーが安心して働ける環境を整備しましょう。

まとめ

スポットワークは、柔軟な働き方を実現する有効な手段ですが、事業主には通常の従業員と同様に、労働基準法をはじめとする様々な法令遵守義務が生じます。「知らなかった」では済まされないトラブルを避けるためにも、人事担当者の皆さまは、これらのポイントをしっかりと理解し、適切な労務管理を徹底してください。