年次有給休暇の管理、されていますか?
▶年次有給休暇の管理と申請書のポイント
企業の人事担当者や中小企業の社長にとって、年次有給休暇(以下「有給休暇」)の適切な管理と申請手続きは、法令遵守と従業員満足の両面から非常に重要な業務です。
ここでは、社会保険労務士としての法律的観点から、有給休暇管理について解説します。
▶年次有給休暇の法的基礎
有給休暇は労働基準法第39条により、雇入れ日から6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して最低10日間付与することが義務付けられています。2019年4月の法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、毎年5日以上の取得が義務化されました。
▶有給休暇管理簿の作成義務と管理のポイント
法改正以降、企業は「有給休暇管理簿」を作成し、取得日数や消化状況を記録・管理することが義務付けられています。この管理簿は3年間保存する必要があり、管理簿の不備は法令違反となるため注意が必要です。
管理簿には以下の情報を記載します。
- 労働者ごとの有給休暇の付与日
- 取得日数・残日数
- 取得状況(時季・単位)
勤怠管理システムの活用や、定期的なチェック体制の構築が、実務上のトラブル防止に有効です。
▶有給休暇申請書の運用と注意点
有給休暇の取得は、原則として「労働者の請求する時季」に与える必要がありますが、会社の正常な運営を妨げる場合には時季変更権を行使できます。取得方法は事前申請が原則であり、申請期限や方法は就業規則で明確に定めておくことが重要です。
申請方法としては、申請書(紙・Excel・電子申請など)や社内メール、クラウドサービスの活用が推奨されます。口頭のみの申請は記録が残らずトラブルの原因となるため避けましょう。
申請書には以下の項目を含めるとよいでしょう。
- 申請日
- 申請者氏名
- 希望取得日・日数
- 取得理由、引継ぎ事項(任意、記載不要)
なお、取得理由の記載は法律上義務ではなく、理由による取得拒否は違法です。
理由欄を設ける場合も、未記載を理由に申請を却下しないよう注意が必要です。
▶まとめ
有給休暇の管理と申請は、労働基準法の厳格なルールに基づき運用することが不可欠です。管理簿の整備や申請手続きの明確化、システム導入などを通じて、法令遵守と従業員の権利保障を両立させましょう。適切な運用が、労使トラブルの防止と職場環境の向上につながります。